或るきこりの一夜

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このサイトは2005年9月時点のマグマです。閲覧のみ可能ですので懐かしんで読んでみて下さい。

或るきこりの一夜

 ここは人里離れたある山奥の山村の一角。その村に長身で無精髭の男とその男を夫にもつ育ちの
良さそうな女の夫婦が住み始めてからもう5年になる。今では二人とも村の人気者で、男は木こり
仲間と山に出かけては、一人で何本もの大木をなぎ倒す蛮勇ぶりをみせる一方では、寡黙ながらも
真面目なその性格が買われ、村の青年団の若頭として活躍。一方の女は最初の方こそ派手な生活
ぶりが抜け切れずに毎週のように届けられる通信販売の品々に村の人々の注目を集めていたが、
最近では都会でのお嬢様気質も抜け、以前に習得していた介護師としての資格を活かして村の老人
達の家を一軒一軒廻り、老人達の世話をしては村の人々からありがたやと感謝されていた。二人は
もはや村にとってかけがえの無い存在となっていたのだった。


そんなある日、村への唯一の交通手段である一日に2本しか出てないバスからある男が 降り立った。
その男は、かつては新日本プロレスというメジャープロレス団体に所属しながらも、WJプロレスという
団体に移籍した大物レスラーである。村には新日本やWJの興行がきたことは無かったが往年のプロレス
人気時代、まだプロレスがゴールデンで放送されていた時代にその男を見ていた村の者が正体に気づき

「あれ、テレビに写ってた人じゃなかんべか」
「んだ、おらたちの村に有名人が村にきただ」

とはしゃぎ散らす。TVで見た有名人が来たという噂は瞬く間に村中に広がった。そんな騒ぎを知ってか知らず
か、木こりの仕事を早めに切り上げて帰ってきた無精髭の男は、友人達との遊び(といってもたいした娯楽も
無いこの村では飲んで騒ぐぐらいしか楽しみも無いのだが)の誘いを断り、家に帰って採れたてのきのこや
山菜を使った汁を作ったり、釜で飯を炊いたりしながら妻が戻ってくるのを待っていた。

(今日でこの村に移住してきてからちょうど5年目だ。思えば妻には苦労ばかりかけてきたもんだ。
せめて今日ぐらいは楽させてやらねば。)

その体躯に似合わず心の優しいこの男は結婚記念日や誕生日
など、そうした心がけを忘れたことが無かった。そんな男の心遣いを知ってか知らずか運命を狂わせよう
としている。その刻は少しずつ近づいてきていた。そして・・・。



ドンドンとノックの音がする。(妻が帰ってきたのだな)と無精髭の男は思った。(俺には贈ってやれる
品などないが、せめて気持ちだけでも伝えておきたい。驚かせてやろうか、それとも何か気の効いた言葉の
一つでもかけてやろうか)などと色々思索をめぐらせている途中、突然乱暴に開けられた玄関の戸の音に
驚き、はっと目をやるとそこには見覚えのある男が立っていた。出来れば思い出したくも無かった、
そんな無精髭の男の気持ちを知らずか、無理やりに記憶の糸を辿らされるかのように玄関に立っている
男は口を開いた。


???「ひさしぶりだな 大森。まぁ立ち話もアレだから上がらせてもらうぞ」

男は革命戦士として一世を風靡し、長州力と呼ばれた名レスラーだ。
無精髭の男、いや大森はかつてこの男の旗揚げした団体に参戦していたレスラーだったのだ。


かつて長州力と呼ばれた男「ひさしぶりだな大森、アレだ。俺のこと覚えているよな。」

大森「・・・。」

かつて長州力と呼ばれた男「名レスラーと呼ばれた俺も今では身体が弱っちまってな。今ではただの吉田だよ」

大森「・・・。」

吉田「マァ硬くなるなよ。お前の家なんだからラックリしてくれよ。どこまで話したっけかな?」

大森「・・・長州さん・・・。」

吉田「吉田だ。俺のこと、吉田って呼んでくれよ。本当はお前が2代目長州力になるはずだったんだよなぁ」


吉田はそういって笑顔をみせる。奥に危険を感じるさせる者だけがみせる事の出来る腹黒い笑顔だ。
いや、その男の身体は本当に黒かったのかもしれない。何か話しかけようとする大森。だが吉田にはそんなこと
にはお構いなしだ。聞く耳もたず自分の話を続けた。

吉田「まさかなぁ、WJ所属のレスラーにアレされる(裏切られる)とは思わなかったよ。健介、越中
   中嶋・・・皆、他団体に引き抜かれていってな。まっ、俺がやってきた事を思えば自業自得だった
   のかもしれないけどな、ハハハ。それなのに大森、お前はフリーだったのに本当によくやってくれたよ。」

大森「・・・・・。」

吉田「突然いなくなった時は本当に心配したんだぞ。まさかお前が裏切るはずないもんなぁ。だって
   思い出してみろよ。WJの末期は俺とお前の二人だけだったんだぜ(笑)これをネタに笑う権利が
   あるのは本当、俺とお前だけだよ。大森、本当 無事でよかったよ」

思わぬ優しい言葉に戸惑う大森。この男が信用なら無いのは身をもって解っていることだ。だが、
大森の心の優しさがむげには断れないという気持ちを起こさせてしまう。

大森「・・・そんな、俺はただ・・・」

そんな大森の様子を察したのか、吉田はこう続ける。

吉田「マァそれでなぁ、今度なぁ、アレだ。突然だが新しく団体を旗揚げすることになったんだ。
   大口のスポンサーがついてくれることになってな。ようやくあの五月蝿い借金取り達を黙らせて
   やったよ(笑)そ、こ、で、だ。肝心の選手が不足しててな。アレだ、相変わらずサポーターだけは
足りてるんだけどな(笑)」

大森「長州さん、俺・・・」

吉田「協力してくれるよな?なぁ、頼むよ。お前には特別に目をつけてやってたつもりだったんだぜ。
   ノアで行き場の無くなったお前を拾ってやったの誰だ?おまえ、普通フリーの選手にあそこまで
   よくしやしないよ。なっ、悪いようにはしないからさ」



大森の腹の内は決まっていた。この話には絶対に乗れない、そう決まってはいるのだが、これが長州力と
いう男の魔力なのか、はたまたその身体から滲み出る威圧感のせいなのか話を切り出せずに、以前の大森
ならの目が泳いでしまったことだろう。だが、この5年間で大森は変っていた。変れたという自負がそれを
許さなかったのだ。初めて全部自分からやらなきゃいけないというフリー時代でさえありえなかった苦境と、
それを乗り越えることで培ってきた克己心が大森の心を奮い立たせる。この話だけは絶対に乗ってはいけない、と。

大森「帰ってください。俺は今、幸せなんです、十分すぎる程にね。プロレスはもうやりません。今だから言える。
俺はWJ時代に良かったと思うことなんて、いやレスラーとしてやってきたキャリアの中で本当に良かったと思えた
  ことは何も無かったんですよ。今、確かに俺の生活はレスラー時代のそれと比べて質素なものです。
  でもね、かつて俺はそれ以上のものを高望みして自分の弱さに気づかず、ただ過ちばかりを積み重ねていった。
あの頃の俺にはもう戻りたくないんだ。もう話すことなんて何も無い。このまま村から出て行ってくれ」

吉田は一瞬、平手打ちを食らわされたような呆然とした顔をした。が、やがてその顔に血管が浮き出てくる。
怒っているのだ。肉体的には明らかにレスラー時代のそれと比べて衰えているものの、その殺気たるや当時の
それを遥かにしのぐものであった。5年間、身体を訛らせる事の無かったはずの大森でさえ思わず身震いをしてしまう。


吉田「大森ぃ、ナァ考えなおしちゃくれんかなぁ!金ならいくらでも都合つけてやるぞ。あの頃の倍払ってやってもいい。
   それに運転手付きのベンツだ。ハハハ そういえば傑作な話があるんだった。オイ!お前ら入って来い」

吉田がそういうと、玄関から黒いスーツに身を包んだ二人の男が入ってきた。大森にはその二人の顔に見覚えがあった。

吉田「ホラ、久々のご対面だろ?健介、越中、挨拶しろよ。」

健介「・・・」

越中「・・・」

吉田「アハハ スマンカッタ。お前ら喋れないんだったな。こいつらには今、俺の運転手やってもらってるんだ。
   健介は運転が下手でなぁ。昔の運転手はもっと良い腕だったもんだが・・・」

ひさしぶりに目にした元同僚達を前にして驚きを隠せない大森。

大森「健介さん!越中さん!・・・長州さん、いったいこれはどういうことなんですか。
ある日を境に二人とも連絡が取れなくなってしまって・・・。」

そんな大森を見ながらとぼけた口調で吉田は悪魔のような発言をするのだった。

吉田「大森、舌切り雀って知ってるよな?俺は自分が借金まみれで苦しんでる時にこいつらがのうのうと
   プロレスを続けているのが悔しくてなぁ。ヤクザ達に殴られ屋と言われてボコボコにされながらもいつかは
   復讐してやろうって事で頭がいっぱいだったんだよ。その心意気が買われてなぁ、今の"成功"があるんだな。
   ハハハ、ヘッドハンティングってやつだよ。それでこいつらを使ってた団体にもでかい顔をできるような
   立場になっちまってよ。こいつらを無理やり辞めさせて、借金こさえさせてな。とっ捕まえたんだわ。そん時に
   あんまり五月蝿いんで(ベロを出すジェスチャーをして下を向けた親指で下の半ばをシュっとなぞる)切っちまったよ。
『家族だけは』ってのが最後の言葉だったけか、なぁ?健介」

健介「・・・(じっと目をつぶる健介)」



大森「馬鹿な!狂ってる」

吉田「いいんだよ 大森ぃ。お前だってこいつらに裏切られて苦しい思いをした仲間じゃないか。
   ナァ、お前にどっちか運転手として好きな方をつけさせてやるよ。どうせ俺は一人しか使わないんだからさ。
   ホラ、好きな方を選べよ」

大森「・・・・・るせん・・・」

吉田「ん?他に何が欲しいんだ?遠慮せずに言ってみろよ」

大森「お前だけは許せん!人の事をなんだと思ってやがるんだ!」

吉田「ぁあ?何、怒ってるんだよ。こいつらは裏切り者じゃないか。
なんだ、お前も俺の心を裏切っちゃうの?そん・・・」

気持ちを抑えきれずに爆発させる大森。五年間溜め込んだマイナスの感情をエネルギーとするかのように
大森が身体をパンプアップさせる。怒りのマグマに身を任せる大森。立ち上がろうとしていた吉田が言葉を

言い終える前に大森は殴りかかっていた。 大森の錆びることなく鍛え上げられた豪腕が吉田の頬を捕らえる。
突然の出来事に受身が取れず玄関まで吹っ飛ぶ吉田。しかし、そこは腐っても元レスラー。勘で即座に体勢を立て直す。そして

吉田「ぶっ、何すんだ オラ!大森!!」

そういって手持ちバッグからサイレンサー付きの銃を抜き出す。即座に安全装置を外す 吉田の様子を
みてそれが本物であること、使い慣れてる環境にあったであろうこと、そして吉田の底知れぬ殺気の
正体を一瞬で察し、大森の身に戦慄が走る。


吉田「やってくれたな大森。お前だけは良い思いをさせてやろうと思ったの・・・。」

銃を突きつけられてなすすべも無い大森を腹ばいにさせるとすかさず雨のようにストンピングを降らしてゆく。
吉田の顔がかつての長州力に戻ってゆく。板張りの床に身体を打ちつけ、みるみる大森の膝が頭が腫れ上がる。

それを見ながら人里離れた山村に高らかと響くレスラー長州力の嘲笑。


長州「ヒヒヒ、お前が死んだらお前の嫁は越中の嫁と同様に存分に可愛がってやった後に、世間には
出られない身体にしてやるからな。おい、健介!起こさせろ。次はリキラリアットの時間だ。
   ・・・・何してる!早くしろ!!」

自分達の為に長州に殴りかかった大森を助けてやりたいと思った健介だったが、 長州に一喝されてマゴマゴと大森を起こしにかかる。

大森「ウゥゥ・・・おい!?」

健介が泣いている。大の男が涙を流しているのだ。舌を切り取られている為か普通にはモゴモゴとしか

聞き取れない言葉を発するが普段、老人と接する機会の多い大森には口の形ではっきりと言葉の意味を取ることが出来た。

(長州さん、もう辞めてくれ。こんな人じゃなかったはずヴァ)と。

最後に台詞を噛む癖が相変わらず治ってないらしく、それが余計に大森の心を揺さぶった。なんとかしなくては。
だが、そんな大森に向かって「大森ィ〜!」と叫びながらアホ面で突進してくる長州。ラリアット一閃。
大森の身体が膝から崩れる。


長州「オイ 健介!もう一度だ!早くしろ!」

そう言われて大森を羽交い絞めにする健介。何度も繰り返されるラリアットを受け続けなくてはならない大森。
起き上がらされる時に(大森スマン) と泣きながら謝る健介。そして健介の様子をみて呆れ顔の長州、いや吉田。

吉田「・・・オイ、もうやめだ 健介、離せ。オイ、止めてある車の方に連れていけ。」


吉田がそういうと健介は素直にそれに従う。



大森の家の裏山中付近まで歩く4人。そこにはナンバープレートがとある県(ここではあえて吉田プロフィールに
記載されている地元とだけ言っておこう)でキリ番に統一された一台の黒塗りベンツが止められていた。
おそらくは廃道となっている村の入り口とは反対側の山道からきたのであろう。そうでなくては村の人達に
気づかれずにこんな不審な車で乗り込んでこれるはずもない。


トランクを健介に開けさせると中にはシートを敷き詰められていた。そこに大森を頭から突っ込ませ、
手馴れた様子でかがませて押さえつける。そのシートからは血の臭いや汗の臭いが染み込んだプロレスのマットと
同じような臭いがしたが、それにしてはずいぶんと血なまぐさい。


吉田「アレだ。特製シートの寝心地はどうかな?大森。懐かしい臭いがするだろう。もっとも血の臭いが若干強め
   だけどな(笑)それにしても健介、さっきの臭いアレは何だ!俺はああいう青臭いものが大嫌いなんだ。
   とんだ三文芝居を見せやがって、後で覚えておけよ。だがその前に大森、お前だ。お前には

   悪いが10カウントを聞くときが近づいてきたようだな。いくら俺が交渉したとはいえ、こういうアレ(断られるケース)
   もたまにあることでな。そういう奴らを看取ってやる為にちゃんとゴングはもちあるいてるんだ。レスラーだからな」
臭い長州が臭いと臭いを連呼する。だが、大森さんのピンチに読んでいる読者にるびをふってやるという気持ちは(ry
あるのはただ「大森さん逃げてええええ」という気持ちだけだ。


 思わぬところで近年起きていたレスラーの失踪事件の真相を知った大森。まさか三年前に蒸発した三沢さんも・・・。

その真偽は語られぬまま最後の時を刻ませようとする吉田。続ける。

吉田「だから最後はレスラーとして見届けてやれる。安心しろ、大森。お前は立派なレスラーでしたよ、、、と!」

目を閉じて必死に何かを念じる大森。

大森(ああ、あいつ、妻だけは無事に逃げとおしてくれよ。これが俺の最後の望みなのだからプロレスに
神様がいたのであったなら、このレスラー崩れの願いだけは聞き届けてやってくれないだろうか。)

パシューと乾いた音を立ててかすれた銃声が鳴った。大森の身体が血にまみれる。不思議と痛みは無かった。
なんだか楽になっていく。薄れゆく意識の中で大森は信じられない光景を目にした。



 大森は無傷だった。いや、正確には長州の元プロにしては荒過ぎる技のせいで打ち所の悪いような妙な打ち身は
しているのだが・・・。では、さっきの銃声は一体。

薄れゆく意識の中で大森が目にしたのは、目の前で声も立てずに倒れ逝く吉田の身体であった。

一瞬の看取りも許されないまま死んでゆく吉田。正確に打ち抜かれた吉田の心臓部からは大量の血はまるで
突然爆発した休火山が噴き出すマグマのようであった。『死んだ』はずの大森の意識が急激に現世に呼び戻されてゆく。


生き返った大森の目が最初に捕らえたもの、それは死体となった吉田であったものとその吉田に銃口
を向けたまま震えの止まらない越中だった。越中も相当の至近距離で撃った為なのか、右腕を中心に
かなりの返り血を浴びていた。

越中「・・・・・」

越中は呆然と立ち尽くしていた。

健介「・・・・・」

健介は何やら取り乱したようにあれこれ言ってるのだが、口の動きが早すぎて
何を言っているのか解らない。突然の出来事に気が動転しているのだろう。

大森「越中さん・・・」

起き上がった大森はようやく戻ってきた意識を何とか持たせようと越中に話し掛けようとする。
だが、そんな大森の目覚めを確実なものにさせるかのように大森に怒鳴りつける(ような口とジェスチャーの)越中。

越中(お前とは関係ないって! 俺が勝手にやったことだって!)

未だ震えの止まらないまま、越中はがなりまくしたてる。そんな様子をみて幾分かの
冷静さを取り戻していた大森が落ち着いた口調で語りかける。

大森「でも・・・。越中さんがやらなくてもチャンスがあったか無かったかの違いですよ。俺が同じ立場なら
   同じ事をやっていた。俺にだって罪はあります。」

柔らかな口調でそう語りかけられ、越中の目から涙がワッと噴き出す。感情が高ぶっているのもあるのだろう。
今まで一度も見せた事のない侍の顔であった。越中がゆっくりと口を動かした。

越中(大森、お前は相変わらず優しいやつだな。・・・もしその優しさに甘えさせてもらえるなら
  俺の嫁をよろしく頼むって!嫁にこの村のこと伝えてくるから!逃がしてくるから!かくまってやってくれないか
   よろしく頼むって!現役時代から反選手会同盟をやらせたり大森には本当に迷惑かけたってことですよ。)

そう言うと吉田の死体をベンツのトランクに乗せる越中。特製"マット"に横たえられた吉田の死に顔は
今まで見てきたどんな顔よりも安らかさに満ちていた。「長州力」の仮面を脱いだ吉田の素顔もまた
仮面であったのかもしれない。大森は吉田のそんな死に顔を見て、深い哀れみの念を感じずにはおれなかった。

おそらくは同じような事を二人も思い浮かべていたのであろう。大森が二人を見やる。重苦しい空気が流れた、、、
と、沈黙したその場の空気を破るかのように突然話かけようとする健介。

健介(俺もいくヴァ、行って今までチョシュさんにやらされてきたとはいえ逆らえ切れな   かった罪を償って
   くるつもり。どんなに悪事を重ねてきたとしても、この人は俺の恩人であり師匠であり大切な人なのだから
   今度こそ、チョシュさん一人には責任を負わせないつもり。俺も一緒に苦しんでやりたい)

ようやく冷静さを取り戻した健介がそういうと越中の方に目をやり、うなずく越中ともにベンツに乗り込む。

大森「オイ! 越中さん、健介さん、待ってくれ・・・。俺も行きます!」

健介(大森!まだ言うか!) ビシッ

後部座席に乗り込もうとした大森にビンタを食らわす健介。恐ろしい顔で大森を睨みつけながら放つそのオーラは
まさにプロレスのチャンピオンだけが撒き散らすことのできる王者の威厳そのものだ。二人はそれ以上は居られないと
いった様子で、いそいそと車を発進させる。主のいない運転手だけのベンツだ。去ってゆく二人に大森は絶叫した。

大森「俺は待ってますから。二人の家族を探してきて、この村に二人の居場所を建てて待ってますから、
   絶対また来て下さいよ。プロレス、、、しましょう。二人が戻ってきたらプロレスしましょうよ。
   ここで!三人しかいないかもしれないけど、派手な演出は出来ないかもしれないけど、最高の試合を二人とまたしたい!」

そう叫ぶ大森の声を聞きながら車内の二人は振り返ることなく叫び返した。

越中(絶対負けないって!)

健介(チャンピオンの座はまだまだ譲らないヴァ!)

二人の言葉にならない叫びは大森に届くことは無かった。だが、大森は待つと決めた。脱力感が大森の身体を支配してゆく


その晩、大森は嫁と5周年目のささやかなパーティーを開いた。

嫁「今日、長州さんがこの村に見えたらしいわよ」

大森「ああ・・・」

嫁「なんでも小さな村々をまわって人々と喜ばすための村おこしと慈善事業を一環としたプロレス団体を
 旗揚げするんだって村長さんと話し込んでたみたい。あなた何か聞いていたの? 長州さんはしきりに『俺には大森の力が必要だ』
 って繰り返していたみたいだけど。・・・長州さん、なんだか目が輝いてたわ。あなた、辛い過去は解るけど、
 協力してあげたらどうかしら?村の人達も薄々気づいていて、あなたの闘う姿を見たがってたわよ。」


大森「・・・」

嫁「長州さんね、たった一人で田舎の村々を周っては協力をしてもらおうと頑張ってるみたいよ。
 今日も村長との懇談が終わったかと思うと市役所の周りで体中にビラを貼って宣伝してたみたい。
 私も忙しくて話に聞いただけなんだけど、そういえばそのビラ、もらってきたわよ。ほら」 」


そう言って嫁は長州一人だけが寂しそうにどっかりとど真ん中に写ったチラシを取り出す。

【長州力の新団】(仮)あの団体の大物も登場予定、こうご期待!と書いてある

大森「ああ・・・」

気の抜けた声でそうぼやく大森。寡黙なのはいつものことなのだがなにやら様子がおかしいことに気づく嫁。

嫁「どうしたの?何か変わったことでもあったの?」

心配そうに話しかけてくる嫁に向かって大森は意を決したように突然力のある声でこう言った。

大森「いや、何でもないんだ。5年間、本当に色々苦労をかけてスマンカッタ。」

大森の目が笑っている。突然、一昔前に流行ったネタをみせられて思わず目を白黒させて驚く妻。

嫁「プッ、あなたが冗談言うなんて珍しいわね。」

それをきっかけとしていつものように何気ない村の出来事なんかを話し込む二人。
大森「〜」
嫁「〜」

二人は取り留めの無い会話をした後、床についた。妻が眠りについたのを横目に見ながら布団の中で大森は
色々と思いをめぐらせた。 明日からやることが増えた、 心配事も増えた、 二人はどうなったのだろうか、
長州さんは幸せだったんだろうか それを思うと大森はなかなか眠れなかった。だが一つだけ確信していた。

(きっとまた明日からも幸せな生活が続いてゆくのであろう。)

出典
【多重とかは】wj総合361【もう勘弁】
http://sports3.2ch.net/test/read.cgi/wres/1066652305/

815-816,818,820,822,825,828,830,839,845,855,873,876より

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  • 改行やらなんやでプチ修正しました -- 編集担当 2003-10-22 (水) 00:56:56
  • 振り返ってみると長げー、編集どうも。長州=ビートたけし なイメージで書いたんだよなぁ -- 作者 2003-10-22 (水) 01:21:28
  • リアルタイムで読んでたが先が気になって面白かった -- 2003-10-22 (水) 02:37:44
  • 見にくかったのと修正と加筆しますた。今日もマグマな一日が始まる。 -- 作者 2003-10-22 (水) 06:03:45
  • 出典が間違っていたので集成しておきました -- ひろし 2003-10-22 (水) 09:08:13
  • いろいろ修正ありがとうござんす -- 編集担当 2003-10-22 (水) 21:36:57
  • ゆーたんの作品かとオモタ、スマソ(wj -- 2003-10-22 (水) 21:51:49
  • おい、涙が止まらないよ。 -- 2003-10-23 (木) 03:47:46
  • 堅気の暮らしを送る男の元に昔の犯罪者仲間が尋ねてくるという典型的なノワールのパターンですね。 -- パルプフィクション 2003-10-23 (木) 09:46:49
  • 塩介の嫁は… -- ほろろん 2003-10-27 (月) 20:29:57
  • ゴマ塩が今頃大森嫁&越中嫁を拉致している悪寒 -- 2003-11-23 (日) 12:05:19
  • ド、ドス黒いっす… -- 2003-11-24 (月) 16:43:47
  • あぁ黒光りだ -- 2003-11-24 (月) 19:28:56

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最終更新日: 2016-03-06 (日) 00:16:04 (891d) HTML生成時間: 0.041 秒
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